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『殻ノ少女』聖地巡礼 井の頭公園

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一部界隈では有名なエロゲ、『殻ノ少女』の舞台である井の頭公園に出かけました。 聖地巡礼と題するにはいささか大仰にすぎる、なんの事はないただの散策です。 なかなかよいところでしたので、記事を書いてみようと思います。

殻ノ少女

本題に入る前に、『殻ノ少女』について少し説明しなくてはならないかもしれません。『殻ノ少女』は遡ること6年前、2008年にInnocent Greyから発売されたエロゲです。同メーカーの前々作『カルタグラ』をプレイしていた私は、発売後すぐに入手して遊んだと記憶しています。この作品は戦後間もない東京を舞台にしたサイコミステリという、エロゲとしては異色な作品ですが、退廃的な内容に美麗なグラフィックと上質なBGMがうまくマッチしており、極めて優れた雰囲気ゲーであると思っています。

本作は主に昭和31年の東京で物語が展開され、とりわけ東京西部、新宿から三鷹あたりの中央線沿線が地理的にフォーカスされています。あまりに時期を外しすぎている感もありますが、遠すぎず近すぎず半日で行って帰ってくるには丁度よいところでしたので、降ってわいた休日にミニ聖地巡礼をすることにしました。

井の頭公園

吉祥寺から三鷹にかけて、中央線の南側一帯に広がる緑地が井の頭公園です。サブカル感漂う吉祥寺駅南口の繁華街を抜けると、鬱蒼とした林が目に入ります。公園内に入ってまず驚いたのは人が多いこと。平日昼下がりに訪れたのですが、園内には親子連れからソロのおじさん、学生風のカップルまでたくさんの人がいました。

公園は存外に広く、池の周りをゆっくり歩くと一時間ほどかかりました。 今年の冬に水抜きをした池はかなりの透明度を保っているようで、覗き込むと礫の底が見え、たくさんの小魚が群れているのがわかりました。

あのベンチ

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殻ノ少女』では井の頭公園の風景がいくつか描かれていますが、とりわけ重要な場所がこのベンチでしょう。本作のヒロイン、朽木冬子と主人公が出会う場所です。原作の背景は実際の風景にかなり忠実に描かれているようで、池のまわりの柵から張り出した桜の枝振りまで実に似通っています。ゲームのキャプチャを頼りにに公園内を散策しましたが、それほど苦もなくこの場所を探し当てることができました。写真を撮った後は、ベンチに腰掛けてしばらく池を眺めていました。

実際にその場に行ってみると、おもしろいことに、いろいろな考えが湧いてきます。一度も来たことのない場所にもかかわらずそこを知っているというのは不思議な感覚です。有名な観光地にも同じことが言えるかもしれませんが、それと似通っていながらも別種の感慨であるように感じられました。

聖地巡礼とレイヤー

ある宗教を信じる人にとっては茫漠たる荒野も聖地であるように、あるエロゲをプレイした人にとってはただの公園が聖地となります。聖地巡礼のことを考えると、どうしてもARのことが頭に浮かびます。実際の映像に擬似的な情報をレイヤードするあの技術です。というのも、井の頭公園にいるときも、そこへたどりつく前、中央線に乗っているときも、『殻ノ少女』の世界と現実世界のあれこれを比べていたからです。今の東京は人が多すぎるとか、沿線の建物は昔からこんなに蝟集していたのだろうかと、あちらとこちらの差異のことばかり考えていたのです。

虚実に関わらず、いまここにないものを念頭に街を歩くということは、レイヤーをかけて世界を見るということなのではないか。してみれば、エロゲという他にない強力な構造をもつコンテンツの形成するレイヤーは、やはり同じく強力でありうるのではないか。そんな益体もないことに考えが巡った散策でした。