『楽園追放』 感想

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先日、話題の『楽園追放』を観てきました。

アンジェラ女史のケツが素晴しい。

前評判どおりこれに尽きる映画だったと自分は思うのですが、それだけで感想とするのはいささか味気がありません。 ブログもあることだし少し長い感想でも書いてみるかと筆をとったはいいものの、いざ書いてみるとすっかりとりとめのないものになってしまいました。 文章を書くのはやはり難しいものです。

以下は若干のネタバレを含みます。

作品自体はかなり王道感のある筋書きだったと思います。 突飛な展開はなくオチも順当だったので、お話について特別書くことがないというのが正直なところです。 そうなるとSFの素養がない自分は、もはやアンジェラ女史のケツについて滔々と語るほかないわけですが、ひとつ個人的に気になった点があったのでそれを書きとめておきます。

『楽園追放』と『エルゴプラクシー

映画館でアンジェラ女史のケツを鑑賞している間から、頭にはアニメ『エルゴプラクシー』のことが浮かんでいました。 『楽園追放』と比べれば随分と暗くマイナーなアニメですが、どうにもこのふたつのアニメは似通っている部分があるように思われます。 大雑把に見れば両者ともSFであり、管理社会とその外部への旅が描かれています。 外の世界は同じく荒廃しています。 主人公は、キャラクターデザインこそ大きく違なるものの、ともに管理社会の警察機構に属する人間です。 あらすじだけ見てもこれだけのことを指摘できますが、ほかにこのふたつのアニメの類似性を強く感じたところがあります。 冒頭、アンジェラが上官に召喚される場面です。

管理社会 - システムの代弁者としての石像

上官は大広間にそびえる三体の像として登場します。上掲のポスターのいちばんうしろに描かれている像がその上官です。 『エルゴプラクシー』にも謁見の間で哲学者の名前を冠した*1ギリシャ風の石像と対話する場面が描かれます。かたや上官、かたやロムド市圏の長たる執国のアントラージュと、肩書きは少し違うもののこれらはおおむね管理社会を維持せんとする立場で主人公と対峙します。このふたつのアニメにおける石像と対話するというシーンの相同性がやけに印象に残りました。

なぜ石像という形をとっているのでしょうか。 上官にしても執国のアントラージュにしても、特別な姿形をしています。 ディーヴァの一般市民は普通の人間型で描かれていますし、アントラージュにしても一般市民のそれはアンドロイド風の形をしています。 これらは明らかに異形の存在です。石像という姿は特権的地位の反映なのでしょうか。 どうにもそれだけではないような気がしてなりません。 確かに大広間に鎮座する石像はおおきな威圧感をあたえます。 権威の象徴に古代の石像はお誂え向きなのかもしれません。 一方で、本来ならばSF的な世界観に古めかしい石像はいささかミスマッチの相を呈するはずです。 それでもなお管理社会というシステムを代弁をするかのように語る石像の姿には違和感がありません。

石像というモチーフは、すなわち管理社会の硬直性なのではないか。 物語の最後、上官たちが一連の事件を(彼らなりに)総括してみせる場面があります。*2 特筆すべき事件ではあるもののディーヴァというシステムは揺るがないと結ぶシーンには、そんな硬直性が端的に現れているように思われます。

さて、このふたつのアニメには先に指摘したような類似点こそあるものの、概して大きく異なるアニメであることは間違いなさそうです。 もはや差異だらけ。それもう主題歌のテイストから声優のキャスティング、色使いからカットの見せ方までテイストはほとんど真逆といっていいでしょう。 どちらが優れている云々は抜きにして、対比をしつつ見るのはたいへん面白いと思います。

もっとアンジェラ女史が見たい

『楽園追放』についてひとつ不満なこととしてその尺の短さはあげておきたいと思います。 映画という体裁をとる以上仕方ないのはわかるのですが、個人的にはもうすこし長いほうがよかったような気がします。 2クールアニメである『エルゴプラクシー』と対比するとなおさらその短さが際立ってしまいます。 リアルワールドの実感はある意味でこの物語のメインテーマであるだけに、地球でのわき道のエピソードにはもっと時間をとってよかったのではないかと思います。 彼女の深刻な実感を風邪のシーンひとつに収斂させてしまったのはあまりにもったいない。 アンジェラ女史が地球でかわいい動きをしてくれるのをもっと見たかったです。たいへん見たかった。*3 小さいエピソードが連続した部分があればもっと世界観を楽しめたのではないかと思うだけに、地球での活動をフォーカスしたOVAなど出てくれたらなあと願っています。 作品自体は好評でしょうから、今後のメディアミックスに期待したいところです。

*1:デリダフッサールラカン、バークリーというお歴々

*2:この点には不満が無いわけでもないです。管理社会はやっぱりどーんと崩壊してほしい……

*3:そのためニコニコでアンジェラ女史が踊るえっちなMMDを見たときの感慨は大きかったです